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聖書が何かを知らない子どももバベルの神話を知っていました

横山光輝はさまざまなタイプのマンガで成功しています。巨大ロボット物の草分け「鉄人28号」。後のガンダムの成功は「鉄人28号」の成功なくしてはあり得ないでしょう。「仮面の忍者 赤影」は人が凧に乗るという新発想を提供しました。魔法使いものでも草分け的な作品を残しています。「コメットさん」「魔法使いサリー」は、あらゆる魔法使いもののモデルです。手塚治虫、石ノ森章太郎と並び、日本の漫画文化を創った一人と言えるでしょう。

そんな横山光輝が1971年に、週間少年チャンピオンに連載を始めたのが「バビル2世」。新しいタイプのSFマンガでした。

画期的な設定

平凡な中学生がおかしな夢をみることからスタートします。夢で見たものが実は現実だったという導入部分。夢と現実とがごちゃごちゃになるという設定は当時としては新しく、読者の興味を最初からひきつけました。主人公は5000年前に「バビルの塔」を建てた宇宙人の末裔という設定も超新鮮。キリスト教徒以外の日本人にとっては、聖書の内容は未知だった時代で、「バベルの塔」の伝説など誰も知りませんでした。

「聖書」という不思議な書物に書かれた史実に基づいている、ということそのものが、子ども達の知的好奇心を大きくくすぐりました。宇宙人の子孫の中でも特に優れたもの一人だけが選ばれ、残された機械を扱う能力と、潜在的な超能力を引き出せるという筋も斬新。平凡な少年が、徐々にサイコキネシスやテレパシーの能力を身につけ、ロボットを意のままにあやつれるようになるという発展性も、読者をひきつけて離しません。

SFマンガの筋書きとしてはあまりにも素晴らし過ぎて、他とは比較のしようがないほどでした。SFマンガそのものは手塚治虫が作ったも同然ですが、手塚の基礎の上に、新しい分野を創造したといっても過言ではないでしょう。日本のSFマンガの中でも、最高の作品と言えます。これを超える作品は存在しないでしょう。

生き方の描き方や人間関係も画期的

主人公は夢の中で誰かに呼ばれていると確信します。幸せな家庭に育った彼は親との別離を悲しみながらも、自分に課された使命のために家族と別れることを決意します。この「使命のために家族をも捨てる」という強烈な信念の表現は、過去のマンガにはなかった設定でしょう。

宿命のライバル「ヨミ」との戦いがストーリーの核となりますが、実はヨミも主人公と同じく宇宙人の子孫とわかります。いわば血のつながりのある者同士の戦いとなる訳です。本来であれば後継者となるべき才能をもった「親類」との争いという厳しいプロットは、「スターウォーズ」にも影響を与えた可能性もあります。

画期的SFマンガの「バビル2世」、是非もう一度読んでみたいマンガです。