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魔球もない根性もないカッコもよくないのに、カッコいいドカベン

1969年に創刊した週刊少年チャンピオンは当初はあまりヒットしていませんでした。「夕焼け番長」「あばしり一家」「ガッツジュン」「太陽の恋人」「バビル2世」など斬新な作品が次々と連載されていましたが、「少年ジャンプ」の足元にも及ばない状況でした。スポーツものは「ガッツジュン」くらいしかなく、当時の「巨人の星」「あしたのジョー」などがヒットした後の時代にしては、やや淋しい状況ではありました。そんな中で起用したのが、水島新司。新進のスポーツ漫画家でしたが、意外なことに最初はスポーツ一辺倒ではありませんでした。

水島新司の斬新な登場

野球マンガの傑作を数々残した水島新司。最初のヒットは少年サンデーの「男どアホウ甲子園」。直球しか投げない剛速球投手を主人公とした破天荒な野球マンガです。次にヒットさせたのは、野球とは全く関係のない「銭っ子」。少年チャンピオンに連載していました。

貧乏兄妹が商売を覚えどんどん成長していく経済ドラマ的なストーリー。金を稼ぐためのさまざまな工夫をアイデアたっぷりにコンテンツとして使っています。当時急成長していたダイエーをモデルにしたような部分もありました。水島新司の作品としては異色中の異色ですが、実に良くできた傑作です。 「銭っ子」の後、1972年にチャンピオンに連載を開始したのが「ドカベン」。「巨人の星」と並び、野球漫画史に残る傑作です。

最初は柔道マンガでした

当時の水島は少年サンデーに「男どアホウ甲子園」を連載中。他誌に野球マンガを載せることを遠慮して、将来野球マンガに転換することを前提に、柔道マンガを始めました。主人公山田太郎は、弁当がでかいことから「ドカベン」と呼ばれるようになります。体が大きく、柔道で活躍しますが、その後岩鬼とともに野球に転向し活躍しました。

とてつもない剛速球があるわけでもなく、魔球のような変化球もありません。特別なバッティングもなく、野球センスと知恵、戦略で勝ち進むという、従来にはなかった設定が新鮮です。ヒーローがデブで不恰好、かっこよくないという設定は、それまでのスポコンものにはあり得ないものでした。梶原一騎の打ち立てたスポーツマンガの王道を、見事にはずして成功した稀有な作品です。

水島は、その後も「野球狂の詩」「あぶさん」「一球さん」など、新しいタイプの野球マンガをどんどん作り上げていきます。 水島新司のマンガはどれも傑作。中でも「ドカベン」は日本の野球マンガの中でも傑作中の傑作です。是非もう一度読んでみたいマンガです。