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のび太は哲学者

ドラえもん 藤子不二雄の作品の多くは、今の子供たちが読んでも楽しめるものが多いです。「時代をうまくとらえていたか?」と問えば、必ずしもうなずけないでしょう。「パーマン」「21エモン」「ウメ星デンカ」「オバケのQ太郎」「ドラえもん」など、どれをとっても時流にはのっていません。むしろ、普遍的なテーマで子供にも受け入れられる作品ばかりです。藤子・F・不二雄の作品にも、藤子不二雄Aの作品にも共通しています。

のび太のセリフがたまらない

「ドラえもん」というタイトルですので、主人公は「ドラえもん」なのでしょう。このマンガはどこからどう読んでも、主役は「のび太」としか思えません。ドラえもんのポケットから飛び出すさまざまな道具は、ストーリーの上では重要なキーになっていますが、それがメインかと言えばそうではないでしょう。

のび太が起こすさまざまな問題を、ドラえもんが道具と知恵で手助けしていくストーリーですので、どうしてもメインはのび太の考えと行動になります。のび太は勉強ができず、運動もできない。頭が悪くて勇気もありません。これが自分の息子だったら、さぞかしがっかりしそうです。

それでもやはり、のび太は魅力的。彼の発言は深いです。「いっしょうけんめいのんびりしよう」などのセリフに含まれる哲学的ともいえるエッセンスは心に残ります。一所懸命生きて一所懸命に悩み、落ち込みながらも誠実に前向きに生き続ける姿は、どの時代においても人間が大切にすべき生き方の模範なのではないでしょうか。

藤子・F・不二雄の描いた夢

「ドラえもん」の連載を始めた時には、ギャグマンガとしてスタートしたようです。元々の構想としては、ドラえもんが主人公だったのでしょう。人気が出てストーリー性が求められるようになると、次第にのび太が中心になっていったのではないでしょうか。

藤子・F・不二雄は、あまりにも普通なのび太について以下のようなことを語っていました。「読み手側からも描く側からも感情移入ができるから自然になる。のび太に自分をだぶらせて、子供の夢をつなぎたい」と。一方で、科学の進歩について、「自分の空想の的中に喜ぶ半面、空想の場が狭められる悲しみを覚える」などとも語っています。夢は夢のままであり続けた方が、楽しいこともあるのかもしれません。

劣等生を描きながらも、実は模範的な人間を描いている点が素晴らしい作品です。今一度読み返したら、人生を見つめなおすことができるかも知れません。