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陸奥A子の世界

太宰治のファンだから、と出身地の「陸奥」をペンネームにしたという陸奥A子。作風はあっけらかんとしており、太宰とはまったく関係ありません。独特なペンタッチは、他のどのマンガ家とも異なり、不思議な作風です。

陸奥A子の登場

学歴は定かではありませんが福岡の出身で、高校卒業後にマンガ家を目指しました。20才のときに、「獅子座うまれのあなたさま」でデビュー。絵のタッチには繊細さはなくうまくはありませんでしたが、タイトルやストーリー設定には、すでに「おとめちっく」の匂いを持っていました。

デビュー作の特徴は、「獅子座」という星座を使った点。「ホロスコープ」がらみは、少女の人気を獲得できるネタです。それと、「あなた」ではなく「あなたさま」とした点が「おとめちっく」と称されたゆえんです。陰からひそかに男子をうかがうというのが黄金パターンで、「さま」をつける奥ゆかしさが好まれました。

田淵由美子が独自の世界を構築するまでに時間がかかったのと同様に、陸奥A子も「陸奥A子ワールド」を確立するのには2年以上かかっています。代表作となるのは、「たそがれ時にみつけたの」「樫の木陰でお昼寝すれば」「すこしだけ片思い」「歌い忘れた1小節」「きのうみた夢」「天使も夢見るローソク夜」などです。

A子ワールドの特徴

陸奥の特徴の一つは丸文字。当時流行っていた「変体少女文字」で、従来の流麗な字体ではなく、絵を描くように丸みを帯びた文字です。いつどのように流行したのかは定かではありませんが、少なくともはやったのには、陸奥A子の影響が挙げられます。セリフは活字で書かれていますが、はみ出した部分などに陸奥の自筆文字があり、それもマンガの魅力の一つでした。

陸奥の描くキャラクターはどれもよく似た顔をしており、特に主人公の男性には共通点がありました。眼鏡をかけた男性を美しく描くという点でも突出しており、「メガネ男子」のあり方の模範も示しました。田淵由美子ほどではありませんでしたが、陸奥の絵にはカリスマ的な人気があり、「りぼん」の付録にキャラクターグッズがついていると、ファンは大喜びという人気ぶり。

基本的にはアイビールックの装いをしており、70年代初頭から流行したファッションを取り入れることで、ファッション雑誌的魅力もありました。陸奥の描いた主人公の服装を参考にして、似たような装いを目指す少女も大勢いたものです。
一つの時代を作った陸奥A子。その独特の世界を今一度味わってみませんか?