TOP ▷▷ 70年代には新しいタイプも登場 ▷▷ 田淵由美子の世界

田淵由美子の世界

高校生時代にすでにマンガ家としてデビューした田淵由美子。70年代の半ばころから「おとめちっく」の旗手として大人気を博します。

田淵由美子の登場

高校時代に、少女漫画雑誌「りぼん」のコンテストで入賞。1970年に高校生ながらデビューします。「ママって不思議」という作品は、本人がのちのち隠したほどの幼稚な内容。当時の少女漫画の中ではごくごく平凡な作品でした。しかし、作者がまだ高校生だったことを考えれば、十分立派な作品です。

「ハウスキーパー募集中」は小さな少女を主人公にした恋愛もの。作画のかわいらしさは、手塚治虫の「不思議なメルモ」をほうふつとさせますが、普通の少女漫画です。その後も、「10年目の夏」「イブの窓辺に」と徐々に絵に繊細さが現れ、ストーリーも大人らしい恋愛ものに変化します。

田淵由美子自身が大学生になったころから、作風も変化します。「ただいま契約期間中」「HAPPY BOXをあけたのは?」などで次第に「おとめちっく」的な魅力を発揮し始め、「夏色の花」(夏の花)で、「おとめちっく」を開花させます。

その後は、「雪やこんこん」「マルメロ・ジャムをひとすくい」「ライム・ラブ・ストーリー」「風色通りのまがりかど」「聖グリーン・サラダ」「クロッカス咲いたら」と作品ごとに進化。

次第にタイトルにもそれらしさを発揮し始め、「フランス窓便り」「やさしいかおりのする秋に」「白いカップにお茶の色」「林檎ものがたり」「あなたに」で「おとめちっく」は完成します。

田淵由美子の特徴

一つ一つのラインが細く繊細で、主人公の手足の細さをより強調しています。しっかりと描き切るというよりも、ラインを流しっぱなしにすることで、ラフさではなく繊細さを強調するという画期的な画風。

少女漫画の読者は中学高校生が中心のため、場面設定も高校がメインの時代に、大学学園ものを描いた点も独自性がありました。おとなのラブロマンスにあこがれる女子高生の人気をぐっと引き寄せると同時に、大学生や社会人にまで読者賞を広げました。

同じ「おとめちっく」でくくられる陸奥A子を始めとする他の作家とは全く作風が異なり、「由美子ワールド」ともいえる独自の世界をつくりあげていました。

一つの時代をつくった稀有なマンガ家です。いま読み返しても心が震えるはずです。ぜひ読み返してみましょう。