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高橋留美子「うる星やつら」の「流れない時間」

うる星やつら 何度かの短編掲載ののち、1980年から連載がスタートした高橋留美子「うる星やつら」。W主人公として雷様みたいな宇宙人・ラムちゃんと、女好きの高校生・あたるのラブコメが描かれましたが、途中からはラム、あたるを中心としたユニークなキャラたちの群像劇ともなっていました。ヒットメーカーとなる高橋留美子にとっては出世作にあたり、マンガ版に加えてアニメ版も高い人気を得ました。

ギャグがメインだが時にはラブコメに

「うる星やつら」が珍しかったのは、少年漫画誌で女性が主人公のギャグ作品を描いたことにもありました。当時の少年漫画誌は、メインの読者である少年たちが「共感しやすい」ような主人公が登場するのがあたりまえで、女性キャラが主人公となるケースはほとんどありませんでした。

また、ギャグ作品でありつつラブコメでもあり、あたるを追いかけるラムと、ラムから逃げつつ他の女性と浮気するあたるの関係性も人気を呼びます。普段はラムを邪険に扱うあたるが、ラムに対する思いを覗かせるエピソードも時折描かれ、これが「二人の恋はどうなってしまうのか?」と読者の興味をかきたてました。ただし、大抵は次の回ではいつもどおりのドタバタギャグに戻ってしまうのですが。

時間が止まった世界設定でいつまでも学園生活を!

この作品は、学園ギャグ作品のテンプレート的作品としてもよく名前を挙げられます。連載開始から最終回まで約7年間、ラムたちは友引高校2年生のまま一度も昇級しませんが、お正月や夏休み、クリスマスといった季節イベントは毎年のように描かれていました。つまり、作中では「時間が流れているようで、実は止まっている」という、不思議な空間であることがお約束となっています。

この設定により、「うる星やつら」を始めとした多くの作品は、続けようと思えばいつまでも、キャラクターたちを成長させずに描き続けることができました。ただし、読者はキャラと違って成長していくため、小学生の頃に読み始め、高校を卒業しても、作中キャラはまだ高校生ということが起こってしまいます。やはり不自然に感じる人が多くなってきたのか、今ではこうした設定の作品は少なくなってきました。

物議をかもした劇場版第2作「ビューティフル・ドリーマー」

この「不思議なお約束空間」をテーマとして作られたのが、劇場版アニメ「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」です。監督の押井守は、この劇場版でラムが夢見た「毎日が学園祭の前日で高揚した楽しい時間」というループする世界を描き、それをあたるに否定させるというストーリーを展開させました。

しかし、このストーリーは「楽しい時間もいつか終わる」という、原作マンガへのアンチテーゼと捉えられ、高橋留美子も「ビューティフル・ドリーマーは押井守監督の作品」、自分の「うる星やつら」とは別物だというニュアンスのコメントを残しています。

ストーリー以外にも前衛的な構図やセリフ回しを多用するなど、傑作として評価はされているものの、「アニメとしては面白いがうる星やつらではない」といった複雑な評価のされ方をしています。とはいえ傑作であること自体は間違いないので、未見であれば原作マンガ版、アニメ版と劇場版「ビューティフル・ドリーマー」の違いを見比べてみるもの面白いのではないでしょうか?